同じことをした二人が、同じ理由で動いたとは限らない。ウェーバーは『経済と社会』第I章の冒頭で、社会学を、社会的行為の意味を理解し、その経過と結果を因果的に説明しようとする学問として定義する。ここで大切なのは、外から見える「行動」と、行為者がその行動に結び付ける「意味」を分けることだ1。
まず「行動」と「行為」を分ける
ウェーバーのいう「行為」は、手足を動かすことだけではない。発言を控える、要求を断らずに耐える、心の中で何かを決めることも、本人がそこに主観的な意味を結び付けていれば行為に含まれる。逆に、同じ動作が観察されても、どんな意味が込められたかは動作だけから分からない1。
会合で黙っていた二人を考える。一人は賛成の印として黙り、もう一人は反対すれば不利益を受けると思って黙ったかもしれない。これは説明のための仮例であり、原典の事例ではない。「発言なし」という記録は二人を同じ欄に入れるが、行為の意味まで同じとは言えない。ただし、本人が後から述べた理由だけで、周囲の圧力や実際の結果も確定できるわけではない。意味を理解することと、行為の経過を説明することは、つながっていても別の作業である。
いつ「社会的」行為になるのか
行為者が他者の行動を参照して自分の行為を方向付けるとき、ウェーバーはそれを社会的行為と呼ぶ。他者は目の前の知人でなくてもよい。過去に接した人、これから会う人、名前も知らない多数の人への予想も含まれる。原典は、貨幣を受け取る人が、将来ほかの多くの人もそれを受け取ると見込んでいる例を挙げる。相手を一人ずつ知らなくても、他者の行動への期待が今の行為を方向付けている2。
その境界を、ウェーバーは身近な例で説明する。二人の自転車が偶然ぶつかること自体は、単なる出来事である。相手を避けようと進路を変える、衝突後に口論する、話し合うことは、相手の行動を見込んだ行為になる。また、雨が降り始め、多くの人が同時に傘を開いても、それだけでは互いに向けた行為とは言えない。各人が雨から身を守るために傘を開いただけかもしれない2。
模倣も同じである。他人のやり方を見て、単に便利そうだから採用した場合と、「流行だから」「その人たちのように見られたいから」と採用した場合は区別される。後者では他者の行動や評価に意味を向けている。ウェーバー自身、現実の境界は曖昧で、他者からの影響と意味を込めた方向付けを必ずしも確実に見分けられないと認めている2。
四つの方向付けをどう使うか
続く§2では、社会的行為を方向付けるものとして四つの理念型が示される。これは実在の人を四種類に分ける診断表ではなく、行為のどの面を説明したいかをはっきりさせるための概念である3。
| 方向付け | 原典での区別 | 会議で発言する場合の仮例 |
|---|---|---|
| 目的合理的 | 目的・手段・副次的な結果を見積もる | 提案を通すには今発言するのが有効だと考える |
| 価値合理的 | 結果とは別に、その行為自体に価値を認める | 不利でも、異論を表明するのが自分の義務だと考える |
| 感情的 | その時の感情に方向付けられる | 怒りが高まり、思わず抗議する |
| 伝統的 | 身についた慣行に従う | 毎回同じ順番で発言してきたので今回もそうする |
仮例の一つの発言には、「役に立つから言う」と「言うべきだから言う」が同時に含まれうる。ウェーバーも、現実の行為が一つの型だけで方向付けられることはまれで、四類型は網羅的でもないと明記する。さらに、慣れきった反応や突発的な感情は、本人に意味が明瞭な行為との境界にある。したがって「感情で動いたから社会的行為ではない」「習慣だから意味を問えない」と機械的に判断しない3。
調査で役立つのは、先に型を当てることではなく、何を確かめれば説明を分けられるかを問うことである。本人の語り、行為の前後の経緯、相手との関係、その場で選べた手段を照らし合わせる。目的と手段をどう見積もったか、結果より守りたい価値はあったか、以前からの慣行は何か。問いを分けて初めて、同じ行動を一つの動機に押し込めずに済む。
医療へつなぐ前に残る問い
受診しない、治療を断る、診察で黙るといった出来事にも、外から見える行動と本人にとっての意味を区別する問いは使える。たとえば「受診しない」という同じ記録には、症状を軽く見ている、仕事を休めない、以前の経験から受診をためらう、通える場所がないなど、異なる経緯がありうる。ここに挙げたのは調査すべき可能性であって、この原典が患者の動機を実証した結果ではない。
関連記事「受診しない人は、どれだけいるのか」は、そもそも何を未受診として数えるかを検討している。このノートで分かるのは、数字で同じ区分に入る行動にも異なる意味がありうるという調査上の問いである。受診しなかった人の実際の理由や制度の影響は、その人たちへの調査と利用可能なサービスの資料を別に集めて確かめなければならない。